「ペットショップは売るだけで飼い方の説明をしっかりしない。」という話がよく出ます。
確かに飼い方の説明としては不十分な感じはあります。
動物は成長するので、そのステージごとにごはんの量や世話の仕方が変わります。
けれど、その時間だけで契約の手続きと、すべてのステージの飼い方の説明をすることは困難なのも事実です。
限られた時間の中で大切なことをお伝えし、お客さんの状況によっては、その日に連れて帰ることををお断りすることがあります。
私が勤務していたペットショップで実際にあった、衝動買いをお断りしたエピソードです。
お店のショーケースにデビューしたばかりの白い子猫
お店に到着したばかりの子犬や子猫は、疲れや不安から体調が安定しないことがあります。
月齢も約2カ月と小さいので、体調不良は命に関わることもあります。
子犬子猫は、ごはんを1日に3,4回食べます。
1回でたくさん食べられず、間隔が空いてしまうと低血糖になり倒れてしまう心配があるからです。
ただ1食ごはんをしっかり食べられなかっただけで、最悪の場合死んでしまうこともあります。
とくに子犬より子猫の方が食欲がなかったり、警戒心が強かったり、慣れるまでに時間がかかる印象がありました。
その子は白っぽいペルシャ系の子猫だったと思います。
食が細く、体重が思うように伸びていきませんでした。
駆虫薬などの投薬期間が終わり、ショーケースに出して様子を見ることにしました。
猫同士交流したり、環境が変わることで食欲が増す場合があるからです。
若い女の人が即決
ショーケースデビューをしてすぐに若い女の人がじっと見ていました。
そして購入を即決。
すぐに連れて帰ると言って聞いてくれません。
対応していたのは店長でした。
「この子はまだごはんをしっかり食べられないから、安定するまでこちらでお世話をして、安定してからお渡しさせてください。」
とお伝えしていました。
しかし、その女の人は「近々友達が遊びに来るから見せたい。」という理由で、安定してから迎えることを納得してくれませんでした。
店長の衝撃的な一言
店長は、今連れて帰ることがどれだけ危険かを説明しましたが、なかなか理解してもらえず。
時間だけが過ぎていきました。
そしてとうとう、
「死にますよ!」
と強い表現で諭していました。
結局、その女の人は連れて帰るのを踏みとどまってくれました。
かわいい子猫を実際に見ると衝動的になりやすく、いいことばかり考えてしまいます。
けれど、動物を飼うということは、ごはんやお水をあげるだけではありません。
具合の悪い子はショーケースにはいませんが、健康であっても子犬や子猫の体調管理は命に関わる想像以上に大変なものです。
さいごに
ペットショップに行く前に、動物の飼い方について調べ、飼える環境が整っているか考えるのは私たちの準備だと思います。
人間の赤ちゃんが生まれるときも、お医者さんや助産師さんが、大人になるまでの育て方を全て説明してくれることはありません。
犬猫だってペットショップで販売されていますが、命です。
受け取った時点で自分でしっかり世話をしなければいけません。
動物を飼う前には、必ず準備をする文化が広まり、不幸な子がいなくなることを祈っています。